これまでインターン先でテンサイを使った実験を行ってきたとは言ってきたかと思うのですが、テンサイって日本では北海道以外なじみがあまりない作物ですし、講義でも扱わないので、ちょっと僕が説明しようと思います。
学名はBeta vulgaris ssp. vulgaris といって、ほうれん草と同じヒユ科の植物です。
葉とかとても似ているのですが、ちょっと写真が分かりにくいですね。
もうちょっと大きくなってくれていたら。。。
テンサイへの関心は1747年にAndreas Sigismund Marggraf というドイツ人が初めて砂糖が含まれているという発見をしたことが始まりと言われております。しかし、そのころの砂糖含有率はわずか1.6%で、あまりの低さより彼はテンサイの育種に興味がわかなかったようです。
しかし彼の弟子であるFranz Carl Achard(ドイツ人)がテンサイの育種に力を入れ、現在では彼が「Father of the beet sugar industry」と呼ばれております。
そして現在の含有率は約20%にもなっており、大幅な上昇に成功しました。
見た目はカブみたいなんだけど、とても甘くてびっくりする。
日本だとテンサイの栽培を行っているところがたぶん北海道しかないので関与している会社もあまりありませんが、ドイツには種苗というマーケットのわりにはわりかし多くの企業が関与しております。
ちなみに、ドイツでテンサイの育種に力を入れざるを得なかった背景として、ナポレオンによる大陸封鎖によってサトウキビ由来の砂糖の輸入が困難になったため、自分たちで育種をしなくてはいけなくなったという背景があります。
ついでに言うと、当時の人たちにとって砂糖は大変高価なものであり、裕福な家庭でないと買えない代物でした。
一般人は代替品として蜂蜜を使っていたようですが、今となっては価値が逆転してしまっていますよね。
テンサイの育種でのブレークスルーは糖度の上昇だけでなく、Monogerm系統の作出も有名です。
テンサイには花(最終的に種子)の形態に関してMultigermとMonogermの2種類があって、Multi-の方は複数の種がくっついていて、Mono-は1粒1粒がばらばらとなっています。
これまた分かりにくい写真なのですが、Multigermの花。
商品化する種は1粒1粒離れていないといけないため、Multigermを商品化しようとした場合、種をばらばらにするのに相当コストがかかるようです(硬すぎて人力で外すのはほぼ無理)。
なのでMultigermは花の多さ=花粉の多さから現在はCMSに交配する花粉親として利用され、母株がMonogermとなっております。
テンサイは一応2年性植物という扱いになっており、バーナリゼーションによって抽苔が促進されます。
農家にとっては望ましくないことですが、ブリーダーにとっては世代促進を可能にして育種年数を減らすことができることから、バーナリゼーションによって促進される遺伝子の発現を簡単にON/OFFできるようにする研究が取り組まれています。
ところで、野生種においてはバーナリゼーションを必要なく抽苔できることが知られており、現在ヨーロッパを中心に栽培種が野生種と交配してできた次世代が花をつけてしまって砂糖のクオリティーも収量も下がるってしまうという「weed beet」問題が起こっています。
バーナリゼーションに関与する遺伝子はBローカスにあるそうです(アラビの研究と同じとか何とか書いてあった気がしましたが忘れました)。
思いつくままに書いてしまいましたが、テンサイに関する何か新しい情報を提供できたなら幸いです。
書くことがそんなになかったので、とりあえず更新するかということでテンサイに関して簡単に、まとまりなく書いてしまいました。
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